第4日目:ジャイプール〜デリー


■風の宮殿

風の宮殿
風の宮殿
 ゴージャスな宮殿ホテルに別れを告げて、風の宮殿へ。細かい彫刻の入ったテラスがびっしりと通りに面して並ぶ、深いサーモンピンク色の美しい宮殿。正面からの姿の美しさを裏切るかのごとく薄っぺらい、まるで映画セットのカキワリみたいな宮殿である。人目に触れることの出来ない宮殿の女性達が、通りを行進する王様のパレードを見るための宮殿ということで、外からは中が見えなくなっている。こんだけ薄きゃさぞかし風邪の通りもいいことだろう。本来は昨日見るはずだったが、下車観光だけだし、午後だと正面が日陰になってしまい写真が奇麗に写らないからと、わざわざ朝、日が当たっている時間の見学にしてくれたのだ。確かに朝日が当たって奇麗だった。そして、ストリート沿いなだけに元気のいい乞食にたかられる。両足がないのにすごいスピードでつきまとう乞食少年の笑顔が、朝っぱらから私の中にまたしても「???」を巻き起こしてくれた。どうやら「???」の正体がつかめないままインドを去ることになりそうだ。
(あの乞食少年は、インドで乞食なんかやってるよりパラリンピックにでも出たほうがいいのではないだろうか?あれだけの敏捷性があればいい選手になると思うのだが・・・)

■渋滞

 また5時間半ほどかけてデリーに向かって300kmの移動である。朝の車内は冷蔵庫のように冷えている。あまりに寒くてサリーの下にサマーセーターを着込む。が、時すでに遅く、どうも熱っぽい。とりあえず解熱剤を口に放り込んでうつらうつらしてみる。
 途中、故障車が立ち往生して初めての渋滞にはまる。原因がわかるまでの間、運転手もガイド・メイラ氏も「外にでないで下さい」と言い残し、情報収集に出かけてしまった。今日の夕方には飛行機に乗らなくてはいけないのに・・・。あっちこっちからクラクションが聞こえてくる。そして、ねむい・・・さむい・・・。
 結局20分ぐらいしてすこしずつ流れ始めたのだが、ここに来て初めてインドに来てからの疑問の一つが解決した。追い越しをかけるとき、きまって追い越すほうの車がクラクションを鳴らしながら追い越しをしていたのだが、トラックの後方に「Phone Please」と書かれた文字を見つけたのだ。走ってるトラックはみんな同じメーカーのトラックでおんなじ形をしているが、日本のトラック野郎からは想像できないくらいカラフルなボディーカラーに、お花とか、象やら牛やらの優しいタッチの絵が描いてある。おまけに運転席側のドアは引き戸式。(助手席側は注意してみていなかったので不明)昼間は暑いので開けっ放しで走ってる人も結構いた。そして注意してみてみると「Phone Please」はどの車にもかいてあった。(ほとんどが、手書き風)なるほど、追い越しのクラクションは決まりごとなのであった。今まで気づかなかったとは・・・。
 途中のドライブインで、今流行っているというインドの映画音楽のカセットテープを買ってみた。よく見たら、ケースにSony Musicと書かれていたので、少しだけがっかりする。もっと、聞いたことのないレコード会社のにすればよかった・・・。(この際中身は関係ないのであった。)おそるべし「It"s a Sony」・・・。

■風のように通り過ぎたデリー市内

クトゥヴ・ミナール
クトゥヴ・ミナール
 やっとのことでデリーに着いたのはもうお昼をまわったころ。郊外のクトゥヴ・ミナールという高い塔を見る。日曜日のせいかやたらと人が多い。イスラム系の建築物だが、ガウディを連想させるような建物であった。作ったころはもっと高かったらしいけど、飛行機事故で30mぐらい低くなったのだとか。すぐ近くにこれより高い塔を建てようとしてくじけた残骸があったのが、ちょっと笑えました。  市内に入って、町のレストランで、何故か昼食は天ぷらである。相変わらず私たちはビールを飲む。茹ですぎたほうれん草のお浸し、浅漬けのつもりかな??と思える塩野菜に天ぷら、みそ汁、ブヨブヨでボソボソのご飯。やはり白いご飯は日本のご飯が一番ね。熱々のみそ汁を飲んでちょっと汗をかく。少し熱は下がったみたいで、少し安心する。そして、ビールを飲む・・・。
 渋滞と動作のとろい私たちのせいで結構時間があっぷあっぷ気味のようで、この後は超特急並のやっつけ観光となる。レッド・フォートと呼ばれる赤褐色の城ラール・キラーを門の前でカメラに収め、そこから夕日の中に浮かんだモスク、ジャマー・マスジットのドでかいドームを遠くに眺め、ガンジーが埋葬されたというラージ・ガートを見に行って(ヒンドゥーなので遺灰は川に流されたらしく墓というものはない)、インド門なんて通りすがりにバスの中から「あれあれ」って眺めただけ。
ラージ・ガート インド門
ラージ・ガート インド門
 それでも、お土産屋さんにはちゃんと連れて行かれるのね・・・。「あとは紅茶屋さんに行くだけ」っていうから、チャイを飲みながらワケの解らんものを適当に買って、残ったルピーをきれいに使った。ぼちぼち買い物も終わろうかというとき、突然血の気がさーッとひいて、ムカムカムカムカとしてくる。「こりゃいかん」とガイド・メイラ氏に「チャイ飲んだら気持ち悪くなったからトイレ行ってくる!」と一言残してトイレに直行・・・。あ〜、食べたものを戻すなんて、食い意地の張った私は生まれてこの方3回くらいしかやったことないのに、お腹は大丈夫でも、やっぱりインドなのね・・・と、少しばかり悔しい気持ちになる。でも、これで瞬時に復活した正直な身体であった。その後行った紅茶屋さんは予想に反し町の小売店で、ものすごーくごみごみしたインドらしいところにあり、最後のお買い物にして、やっと普通の店で買い物をしたと嬉しくなった。本当は、バザールにいってくだらないものや、スパイスなんかを買いたかったのに・・・シクシク・・・。お金があったら楽器屋さんでシタールも買いたかったのに・・・と、欲求不満を募らせながら、空港に向かうバスに揺られていた。

■さらばインドよ、また来る日まで

 帰る時間はとっととやって来る。空港に着くまでの間に、一番後ろの席に陣取っていた私とくりゃ吉は、テキパキと洋服に着替え、サリーを畳み準備OK。ちゃんと、着替えるタイミングまで計画していた抜け目なのない私たちであった。見かけによらず気が利いて、たまにウソも言うガイド・メイラ氏とは、連日の飲み仲間だったから、お別れはちょっぴり悲しい・・・(でも確か電話番号を初日の夜に教えてもらったような気がするから、その気になればいつでも連絡とれるんだけどさ)。
 初めてインドの土を踏んだインディラ・ガーンディー国際空港に入り、買い込んだお土産とサリーをスーツケースに詰め込んで、出国手続き。今回は非常にスムーズだ。そしてこのころから、くりゃ吉が無言になっていった。インドは、3時間前にチェックインなので、空港内での時間はまだだいぶ残ってたが、くりゃ吉は「寒い・・・」「頭いたい・・・」を連発し、薬を飲んでベンチに座ったまま動こうとしない。最後の最後までインドを楽しんでから、具合が悪くなるアタリがいかにも彼女らしいのだが、結構辛そうだったので、上着をかけてあげる。アタシだってさぶいよぉ・・・。やっと、搭乗が始まり飛行機に乗り込んだ。 。

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