第5日目:香港


■墓参り

 今日はブーブーパンを歩き食いしただけで、まっすぐお墓参りに行く。少し前、Beyondというバンドのボーカルが某フジテレビのバラエティー番組収録中の事故で亡くなった事を覚えている方も多いと思われる。Beyondは香港では超スーパー売れっ子バンドであったので、当時こちらでは大パニックとなったが、その様子はあまり詳しく報道されていた記憶はない。今日行くお墓は彼のお墓である。最初に香港に来た4年前にもやはり墓参りには来た。仕事絡みで面識のある人だった、とだけ書いておこう。
 観光客はまず降りることはないであろうKwun Tong駅で地下鉄を降り、あとはタクシーでお墓のすぐそばまで行ってもらう。海を見下ろす素晴らしいロケーションに広大な墓地が広がっている。こちらのお墓は斜面にひな壇のように作られているうえ、ここは広いので、墓地の入り口から急な坂をかなり入っていかなくてはお墓にたどり着けない。なので、すぐ目の前までタクシーなのである。運転手さんにそのまましばらく待っていてくれるようお願いして、墓標までの階段を上る。ミュージシャンらしく個性的で真っ白なお墓なので、遠くからでもすぐ見つけられる。ファンの人達がたびたび墓参りに訪れるため、線香やライターなどはお墓の裏のブリキ箱に入れてある。誰が管理しているのだろう。4年前と同じようにその箱はちゃんと機能していた。
 いろんなことを思い出しながら3人で線香をたむけ手を合わせる。墓標には当時のまま歳をとらない彼の顔があった。(こちらのお墓は顔写真入りがポピュラーです)来月は彼の誕生日と命日のある月だからきっとたくさんの人がお墓参りに来るだろう。もちろん日本からも。また香港に来ることがあったら必ずここにも寄るからね、と約束して彼の墓を後にした。

墓参り

■九龍再び

 Kwun Tong駅にもどり、ニャンコ先生は太古へ、私と港のヨーコは尖沙咀へとそれぞれ反対の地下鉄に乗ってしばし別行動。私達2人は尖沙咀の裕華國貨(ここも地元チックなスーパーだが、食器類と民芸系の土産物が充実)で共通の友人や自分用にお土産を買い、DFSではらけてそれぞれお買い物。港のヨーコは目的のコーチのバッグを目指して足取り軽く店内へ消えていった。私も探していた中国食器を探しに更にべつの裕華國貨まで足を延ばすがやはり見つからず戻ってきた。もう一つ先の駅前にでっかい店舗があって、以前そこで買い込んだ普段使いの食器を増やそうと思っていたのだが、さすがにそこまで行く時間はなく断念。実は少し割ってしまったものがあって補充したかったのだが・・・。まぁ、香港は近いしまたそのうち来ればいいや、くらいの気持ちであった。
 再び港のヨーコと合流し、スイカジュースを飲みながらメインストリートのネイザンロードを少し歩いてから、また地下鉄に乗ってホテルに戻った。珍しく食べ物から遠ざかった一時。

重慶

■ヒルサイドエスカレーターと1911

 夕方4時半、また3人揃ってホテルを出発。中環(セントラル)までトラムって、最近出来たヒルサイドエスカレーターなるものに乗りに行く。エスカレーターがいくつも連なって丘の上まで運んでくれる。朝だけは通勤に合わせて下り運行しているらしい。このエスカレーターも、ウォン・カーウァイ監督の映画「恋する惑星」に登場する、新スポットである。一方通行なので調子こいて最後まで乗ってしまうと戻ってくるのが一苦労である(戻りは階段さ)。
 このエスカレーターの面白いところは、乗っているだけでいろんな風景に出会えるところだろう。それこそ庶民の生活の裏路地の様な風景からSOHOのおしゃれな町並みまで、のぞき見的な楽しさがある。時間と体力に余裕があれば、是非とも最後まで乗ってみたいものであった。
 幸いにも、途中に目的地があったのでとりあえずその付近でエスカレーターを降りる。通りすがりの陶器屋で、探していた食器によく似たものを見つけて、ちょっとサイズが違うような気がしたのでおかしくないように2つ買う。お店のおじさんは自主的にだいぶ負けてくれた。嬉しい。その先に目的の「club 1911」という孫文ゆかりのバーがあった。孫文はニャンコ先生の中でなぜか激しくマイブームになっている革命家である。中に入るとしゃれた佇まいであった。静かな夕方をゆったりと楽しむ。ここで香港旅行最初で最後の3人揃った写真を撮ってもらう。時間も早かったのでお客は私達だけという贅沢な時間であった。ニャンコ先生の顔がとっても嬉しそう。
 その後の探し物も迷いながらもなんとか発見できて、目的は順調に実現化している。すばらしい!

庶民の生活

■タイムズスクエア

 エレベーターで来た道を階段で降り、中環(セントラル)から地下鉄でCauseway Bayに移動。地上に出るとそこはもうタイムズスクエア。この辺はいつ来ても人が多い。そしてスリも多いらしい。何件目のショッピングモールであろうか、またしても時間を決めてばらける。目的の無い私はまたも港のヨーコの買い物について回る。ここはウィンドーを見て回るだけでも結構楽しめるぐらい沢山お店が入っている。レストラン街も名店揃いで充実しているのだが、今日の夕飯はここではないのであった。

■Happy Valleyとはこれいかに?

 タイムズスクエアをでた我々は、今度はトラムに乗って、夕飯にありつくためにちょっと山側のHappy Valleyへ移動。ここは競馬場で有名な所だが、実は高級住宅街でもあるらしい。トラムの2階からはライトアップされた競馬場の芝が美しい。 そんな一角にひっそりと、目指す「Dim Sam」があった。ここは高級素材を使った創作点心で有名なお店。中に入ると既に待ちのお客さんがいらっしゃる。美味しいもののためにはじっと待つのである。有名な割に店はアットホームな広さだったりする。よく見ると昔風のインテリアも素敵だったりする。いい匂いが漂ってくるおかげで腹減り倍増で、待ってるうちからなぜかわくわくしてしまう。場所柄芸能人やモデルさんなんかもよく出没するらしい。  しばらくしてようやく席に通される。メニューはオーダーシート記入方式で、ここでも日本語のメニューを出される。今迄かたくなに日本語メニューを拒み続けていた我々だが、ここだけはこちらもしっかり見させていただいた。だって写真がついてたんだも〜ん(^o^)。これだとシェアするときに数も解るから正直有り難い。もちろん値段と品数のチェックはしましたがね。しかし、腹が減ってるときに食いもんの写真を見せられると、オーダーし過ぎに拍車がかかるね。(ファミレスは商売上手かも?) フカヒレだのツバメの巣だのアワビだの、ついつい財布のヒモが緩んでしまうね。余計なものまで頼んでしまったけど、どれもこれも激ウマ揃いだったから、必死になって食べましたとも! 限りある胃袋の容量が恨めしいよ、まったく。  そして、きわめつけはここでもやはり頼んだマンゴープリン。今迄のマンゴープリンとは全く別物と言っていい、独特のマンゴープリン。もう、感動モノであった。美味しいとかまずいとかではなく、全く別の食べ物になっていた・・・としか表現の仕様がない。「是非とも東京に支店を出してくれー!!」と虫のいいことを心の底から本気で願った我々であった。

Dim San

■小さな旅・その1(西側)

 涙ちょちょ切れるくらい満足して「Dim Sam」を出た我々は、時間も早いので、トラムに乗って終点まで夜風に吹かれることにする。片道2ドルの小さな夜の旅である。なんてロマンチック・・・。
とりあえず一番先に出発するトラムに乗り込み、2階へ上がる。競馬場を見ながら小さな旅スタート。見慣れたホームタウン(?)Wan Chaiを通り過ぎガタゴトとゆっくり進むトラム。中環(セントラル)のランドマークも通り越し、地下鉄の終点上環のちょっと先、ウエスタンマーケットのところでお終いとなった。路線によってはまだ先もあるのだが、比較的早くになくなってしまうトラムだけにこの時間ではここまでか?2ドル払ってトラムを降りて、引き返す別のトラムに乗る。今来た道をゆっくりと戻る。車も減って、道路は静かである。乗客もまばら。今思い返してもなんだか夢の中の出気ごとだったような、安上がりで素敵な小さな旅であった。
 いつもの停車場が近くなると狭い階段をよろめきながら1階に降りて、2ドル硬貨を握りしめる。32円でこんな素敵な思いができるなんて、香港ってスバラシイ!!(単純?!)さっきまで食い物に財布のヒモを緩めていたかと思えば、今度は2ドルで感激してるなんて、ジモティーからみれば旅行者はいったい何を考えているんだろうかと不思議に思えるんだろうなー(^^;)。
 いい気持ちに浸っていると、ニャンコ先生に「昨日トイレで払った10ドルで、何回トラムに乗れる?」などと突っ込まれてしまった(j_j)。

■ドリアンの甘い罠

 Wan Chaiでトラムを下車し、フルーツ屋の前を通るとドリアンの切り身が12ドルで売っていたので、うっかり買ってしまう。が、ニャンコ先生と港のヨーコは「このばか者!」と言わんばかりのあきれ顔だ。「臭いよー」と言われるが、べつにたいして気になるような匂いではないではないか。(私はドリアン初心者であった。) そんなに言うならとりあえず一切れはここで食べちゃうから大丈夫よ、と、ぐにゅりとつまんでかぶりつく。うま〜い!とろとろで甘くて、素敵な食感ではないの。それにやっぱりそんなに臭くないわよ。新鮮な証拠だわね。・・・ニャンコ先生は既に他人のふり状態である。
 「ドリアンをナメたらいかんぞよ!」と港のヨーコに釘を刺されるが、そんなに臭くもないので、またラップをかけなおし、ホテルの部屋の冷蔵庫にしまって、ニャンコ先生の部屋にて明日のマカオ行きの確認をする。ついでに新聞やらテレビなんかも見たりして、1時間ほど長居をしてしまう。
 じゃ、明日は10時出発ということで、おやすみなさ〜い!と二人で部屋に戻る。そうそう、ドリアンが残ってたじゃない。港のヨーコに「お願いだから今日のうちに食ってくれ!」と言われ、もー!大げさなんだから・・・と思いつつ冷蔵庫を開けると・・・「くっ、くさ〜〜〜い!」 具合の悪くなるような臭さではないが、たった1時間で先程とはケタ違いの強烈さになっているではないか。「ほら〜〜」と港のヨーコは言わんこっちゃないという渋い顔。ドリアンを甘く見た私が悪かった。もう、意味もなく笑いが込み上げてきて、ゲラゲラと笑ってしまった。これは何としても今夜中に、いや、今すぐにでも平らげてしまわないと大変なことになる。笑いながらも、焦って一思いにかぶりつく。でも、味は相変わらずうま〜い!なんだな、これが。結局、ぶーすか言ってたくせに港のヨーコも一口食っていた。でも、ルームメイトがドリアン大丈夫な人で良かったよ〜、と感謝する私であった。
 一心不乱に食いついてようやくドリアンは腹の中に収まった。でも匂いは未だ少し残っている。一度外に出て部屋に入るとよく解った。ドリアンに理解ある港のヨーコであったが、残った種を部屋のごみ箱に捨てることは許してくれなかった(j_j)。仕方がないので、ドリアンの種と入っていたパックと掛けてあったラップのドリアン残骸セットをまとめ、深夜2時過ぎ、こそこそとホテルを抜け出し、道端に設置してあるでかいごみ箱まで走って捨てに行った。歌舞伎町のような夜中でも明るい環境に感謝した。
 部屋に戻るとやはりまだ少しドリアンの匂いがした。今日は強烈に冷却効果のあるエアコンを回したままネルしかなさそうだ。ごめんよ〜、港のヨーコ。もう、うっかり買ったりしないよ。(j_j)  そんな環境の中でもすやすやと眠りについてくれる港のヨーコに、再び感謝する私であった。

Dim San

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